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ナンバー17、2010年 目次へリンク 2010年11月30日発行
特集 KOSMOS III―新図書館システムの導入―:第1部
メディアセンターの将来と新図書館システム
田村 俊作(たむら しゅんさく)
メディアセンター所長・慶應義塾図書館長
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 2010年4月にメディアセンターは丸善(株)のCALISをベースとしたKOSMOS II図書館システムから,Ex Libris社のAlephとPrimoをベースとしたKOSMOS IIIシステムに切り替えた。KOSMOS IIシステムの稼働が1998年であるから,実に12年ぶりのシステム更新である。
 他の多くの組織同様,今日の図書館の定型的な日常業務は,システムと分かちがたく結びついて遂行されている。したがって,図書館システムを更新する際には,(1)これからの図書館の進むべき方向に沿ったものであること,(2)一方,従来の業務から新システムのもとでの業務へと,あまり大きな不都合や困難なしに移行できること,(3)そしてできるならば,思いもかけない不具合や将来の方針変更に対応できる柔軟性と拡張可能性を備えていること,といった点を考慮する必要がある。今回の更新の際にも,こうした点は当然考慮されている。
 本稿では,特に(1)を中心に,新システムがメディアセンターのどのような方向性に沿っており,どのような可能性を拓くものであるか,私見を述べてみたい。

1 KOSMOS IIIの基本的な考え方
 KOSMOS IIIという愛称で呼ばれている新システムは,Ex Libris社のAlephとPrimoというシステムを中核に構成されている。このうちAlephは本の発注,受入,目録,貸出,雑誌管理といった,図書館内の業務を処理するためのシステムである。一方,Primoは検索システムで,OPACと呼ばれてきた従来の利用者用目録を超えて,図書館の蔵書だけでなく,図書館が契約するデータベースや電子ジャーナルなどもまとめて検索する能力を持つ。
 KOSMOS IIと呼ばれる従来のシステムでは,全メディアセンターが一体となったシステム運用を実現していたものの,基底にある考え方は伝統的な印刷物中心の蔵書を前提としたものであった。そのため,蔵書を前提とせず,インターネットを通じたアクセスによって利用する電子情報資源の管理や提供にはうまく対応できなかった。
 そこで,メディアセンターは2007年にVerdeとSFXという同じEx Libris社のシステムを導入した。Verdeは電子ジャーナルなどの電子資源の管理システム,SFXはその検索システムで,リンクリゾルバと呼ばれる検索機能により,例えば,雑誌記事索引データベースの検索結果から,求める雑誌記事のフルテキストをただちにダウンロードすることを可能にしてくれる。つまり,電子情報資源の管理と提供については,メディアセンターはすでにEx Libris社のシステムを導入していた。
 メディアセンターはまた,機関リポジトリKOARAなどにより,貴重書や各種紀要など,慶應義塾が持つさまざまな文書や資料をデジタル化し,インターネット上で公開してきた。こうした内部作成のデジタル情報資源も,他の情報資源と一括してフルテキスト検索できるようにしたいが,KOSMOS IIでは望むべくもなかった。
 新システムKOSMOS IIIの開発は,累積するKOSMOS IIの課題に対処し,これからの環境変化に適切に対応できるようにすることを目的とするものであった。その基本コンセプトは次のようなものである。
 (a)KOSMOS IIまでに実現してきた,電算システム導入による業務効率化をさらに推し進める。その際には,業務フローの単純化と国際標準化を追求する。これには二重の意味がある。一つは互換性で,同じ標準を採用する他のシステムやデータを容易に利用することができる。これにより効率化を図ることができると同時に,将来の容易なバージョンアップが期待できるようになる。いま一つは拡張性で,他のシステムやデータと結ぶことにより,単独のシステムではできない能力を発揮することができるようになる。
 (b)電子情報資源の管理と,本や雑誌を中心とする伝統的な図書館資料の管理とを分ける。電子情報資源については,今後一層増大すると共に,新しい資源,新しいサービスが次々に登場してくるものと予想されるため,システムの柔軟性,拡張可能性が重要になる。一方,伝統的な図書館資料については,図書館における相対的な位置づけの低下に合わせて,より一層の効率化が求められる。
 (c)他方で,検索面においては,伝統的な図書館資料も電子情報資源も一括して,区別なく検索できることが望ましい。また,書誌データ,フルテキスト,静止画像,動画,内部情報資源,外部情報資源なども,リンクにより自由に探し,辿ることができるようにしたい。この部分は主にPrimoが担っている。
 一言で言えば,KOSMOS IIIが実現をめざしているのは,(b)電子情報資源の管理と伝統的な図書館資料の管理とを切り離して,電子情報資源の管理は今後の拡張を可能にし,伝統的な図書館資料は効率化により縮小を図る,(c)一方検索面では,多様な情報資源をシームレスに検索可能にする,また(a)標準化により効率的な業務遂行とサービスのさらなる展開を図る,ということになる。次項では,この三点を今後のメディアセンターの方向性と結びつけて論じてみたい。

2 今後の図書館の方向性とKOSMOS III
 メディアセンターは2006年度から2010年度の5か年にわたる中期目標を定め,その達成に向けて中期計画を策定・実施してきた。現在は次の5か年の中期計画を策定するために,メディアセンター内部にワーキンググループを設けて検討しているところである。ワーキンググループの議論に影響を与えたくないので,私自身が考える将来像は当面語りにくい。私としては,ワーキンググループのメンバーには自由な発想でメディアセンターの将来を考えてもらいたいのである。
 そこで,本稿では将来像を考える際のいくつかの原則を確認したのちに,上記三点に限定して,将来の方向性を語ってみることにする。個人的には,メディアセンターの将来の鍵となるのは人(職員)と組織・制度だと考えているが,今回はその点には触れない。

(1)メディアセンターの将来を考える際の原則
 図書館の今後を考える上で一つ重要な点は,技術決定論的な錯覚に陥らないことである。近年はインターネットを中心とした情報通信技術の発達が著しく,新しい情報サービスが次々に開発・提供され,デジタルコンテンツの充実もめざましいために,ややもすると図書館の将来をデジタルメディアの点からのみ考えたり,極端な場合には「図書館の消滅」を唱えたりしがちになる。しかし,少し冷静になって周囲を見回せば,日本の大学図書館で喫緊の課題とされてきたのは,アウトソーシングを含む組織の見直しとスリム化であり,それに伴う大学内での役割の再定義であって,デジタル化により直ちに図書館不要論のようなものが起こったりしているわけではない。図書館を運営する側としては,そうした技術の展開に常に注意を払いつつも,図書館の使命と,新しいサービスやコンテンツを受容する利用者のニーズの所在をベースに,サービスのあり方を考えるべきであろう。
 また,情報通信技術は常に変化するし,それに伴って新しいサービスや新しいメディアが絶えず登場するとともに,時の経過につれて急速に陳腐化してゆくことも想定しておいた方が良い。図書館は新しい技術・サービス・メディアにつきあいつつ,学習・教育・研究・医療活動を支援する,という使命の遂行に努める必要がある。現在の技術状況にとらわれた未来予測には限界がある。メディアのいかんに関わらずコンテンツを保持し,利用者が望むやり方で提供する体制を作り上げることも,図書館の変わらぬ使命であろう。
 メディアセンターは6キャンパスに分かれた各地区メディアセンターの連合体としての性格を持っている。各キャンパスは,慶應義塾社中としての一体感を強く持ちつつ,独自の文化を作り上げている。メディアセンターも同様で,相互に調整しつつ,各地区がそれぞれのキャンパスの特性とニーズに応じた多様なサービスを展開してきている。この特色は今後も保持したい。KOSMOS IIIなどのシステムは,インターネットのように,各地区が独自で多様なサービスを展開するための共通インフラのようなものだと考えるのが適切であろう。

(2)電子情報資源と伝統的な図書館資料
 (1)で技術決定論的な発想の危険性を説いたにもかかわらず,私はいずれ電子ジャーナルや電子書籍などの電子情報資源が,大学図書館が提供する情報資源の中心になるだろうと考えている。そう考えるのは,それらは利用者にとっては何よりも簡単にアクセスできる便利なメディアであり,出版社にとっては販売方法を一変させ,成功すれば安定的な収益をもたらしてくれる商品であるからであって,別にそれらが読みやすい,利用者が好むメディアだからではない。
 現在のところ,電子ジャーナルや電子書籍は,研究室でも自宅でも,インターネットに接続できるところであればどこからでもアクセスして,閲覧したりダウンロードしたりでき,保存にもスペースを取らない,いわば「便利なメディア」という範囲を超えていない。利用にしても,後日の引用のために,ざっと斜め読みをしてフォルダに保存しておく(そして忘れてしまう),といった読み方のほかは,線を引く,メモを取る,辞書を引いて単語の意味を欄外に書く,といった,学習・研究的な読書行為の本体を変えるには至っていないように思われる。いずれこうしたことのできる読書端末やソフトが現れ,われわれの読書行為の姿を変えてしまうのだろうが,それがいつになるのかはわからない。
 ともあれ,これまで図書館がもっぱら行ってきたのは,来館者に対する蔵書へのアクセスの保障であったから,電子情報資源の登場と普及は,図書館のあり方を変えるだけのインパクトがある。現実にメディアセンター予算のうちで電子情報資源に充てられる割合は年々増えていることもあり,メディアセンターとしては,伝統的な図書館資料の管理から電子情報資源の管理へと,管理の重点を移してゆく必要がある。
 すでに述べたように,KOSMOS IIIでは伝統的な図書館資料の管理と電子情報資源の管理とを分離した。分離が直ちに電子情報資源へのシフトや効率化を意味するものではないが,スリムでかつ安定的なシステムであるAlephに伝統的な本や雑誌の管理を担わせ,電子情報資源の保存・管理・サービス提供に関するさまざまな工夫を積み重ねることにより,電子情報資源主体のサービスへと徐々に切り替えてゆくことが可能となろう。しかし,その時期についてはキャンパスにより差があることを十分に理解し,注意深く対応することが肝要である。

(3)多様な情報資源の統合検索
 Primoの導入により,メディアセンター所蔵資料,電子ジャーナルなどの契約情報資源,さらにはインターネットを通じてアクセスできる多様な電子情報資源を一括して検索できる体制ができたことは,新システムの大きな成果である。その効果はまだそれほど出てきているわけではないが,いずれ大きな力を発揮するものと期待している。
 利用者にとってのアクセス環境の整備は,KOSMOSと呼ばれるこの新OPACを中核に,各自の学習・教育・研究・医療活動の現場に組み込まれたサービスの提供を目指す方向で進められるだろう。そのためには,コンテンツの充実や技術的課題の解決のほかに,keio.jpと呼ばれる共通認証システムを通じたサービスの拡大,多様化する大学構成員への対応など,課題は多い。
 同時にまた,メディアセンターウェブサイトの工夫やAPI等技術情報の公開などにより,メディアセンターの電子情報資源を積極的に外部に提供することも求められる。
 忘れてならないのは,伝統的な図書館資料の扱いで,これまでに収集してきた図書館蔵書は慶應義塾大学が誇るものとして,しっかりとした保存・提供の体制を維持してゆくことが必要である。また,三田メディアセンターを中心に所蔵されている個人文庫や特殊コレクションは,他をもって代えられない貴重なものであり,これらの保存・提供体制は一層の充実が望まれている。全塾的に書庫スペースは近い将来限界に達するものと予想されている。とかく電子情報資源の方に目が向いてしまうが,これまでの図書館蔵書やこれからもなお収集される紙媒体資料の保存・提供体制の強化も,電子情報資源に劣らず重要な課題であることをしっかりと認識しておきたい。

(4)標準化
 KOSMOS IIIの特色の一つは,目録のフォーマットであるMARC21をはじめ,国際的な標準を採用していることである。また,KOSMOS IIは基となったCALISを中心にかなりのソフトを新規開発することによって,いわば慶應向けのシステムに作りあげられているのに対し,KOSMOS IIIではそうした調整はなるべく行わないようにして,慶應の業務手順をシステムに合わせて修正する方向で開発をしている。システムに合わせた業務手順の変更は,ときにかなりの混乱と予想外の非効率を生むことがあるが,うまく行く場合には,業務自体の改善につなげることができる。
 今回も従来の慣行にうまく合わずに苦労した部分や,規則を変える必要に迫られるなどの問題が生じたし,未解決の部分もあるが,これまでのところ全体として大きなトラブルなく業務が遂行されているのは喜ばしい。
 各種の標準化によって,メディアセンターが得るものは大きい。何よりも大きいのは,出来合いのシステムやサービスを容易に利用できるようになること,改善や進歩,新たな技術の登場等に,大きなコストなしに容易に対処できることである。技術にしてもサービスにしても,一から開発・構築する必要が無くなるのはありがたい。目録のFRBR化(目録データのより高度な構造化)など,デジタル化に関連して急速な進展が予測される業務は多いので,標準化を追求することは今後ますます重要になってくるだろう。
 とは言え,書誌情報に関わる部分,特に件名標目など,一見標準化されているようでいて,具体的なデータの整備状況などをみると,実は不十分にしか達成されていないものもあり,これらは課題として残されている。件名標目をはじめとする典拠コントロールなどは,日本語特有の問題があるため事態はやや複雑だが,サービスの質に関わることであり,課題の優先順位としては低いかもしれないが,できれば何とかしたいことではある。単なる印象でしかないが,わが国図書館界全体が国際標準化の動向にやや鈍くなっているようなのは気がかりである。

3 おわりに
 KOSMOS IIIがもたらすものは,インターネットの時代に対応した強力な標準ツールである。全キャンパス共通の業務はこれにより今後の発展の方向を考えることができるようになった。その上で,これからの真の課題は,標準ツールを使いこなして,各メディアセンターがいかにキャンパスの実情に即した独自のサービスを展開してゆくか,ということになるだろう。
 デジタル化の進展によって図書館は役割を変えてゆくだろうと予測されている。何年先になるかわからないが,情報が本や雑誌を離れ,デジタルで利活用されることが研究・教育で当たり前のことになったとき,図書館は研究・教育の現場において,教職員・学生による情報の利活用を支援する機構へと変化し,図書館の施設は知識集積の場から,ユニークな知識生産の場へと変貌を遂げているだろうと私は想像している。
 想像は所詮想像でしかないが,次を見る姿勢は大切であろう。共通情報インフラのもとで各メディアセンターが独自の課題を追求する,というメディアセンターの方針は,グローバルな情報インフラの時代において,ローカルに研究・教育を支援する機構を作ろうとする大きな方向に沿ったものである。これからも,大学,教職員・学生,内外の図書館関連領域の動向を見ながら,常に一歩先を行く図書館運営を心がけたい。KOSMOS IIIはそのための大切なツールである。

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