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ナンバー17、2010年 目次へリンク 2010年11月30日発行
特集 KOSMOS III―新図書館システムの導入―:第1部
第3世代図書館システムの提供開始―KOSMOS IIからKOSMOS IIIへ,OPACからKOSMOSへ―
平尾 行藏(ひらお こうぞう)
塾監局参事 2010年10月までメディアセンター本部事務長
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1 はじめに
 本年(2010年)4月,私たちの図書館システムKOSMOS(KeiO university System for Multi-media Online Services)は一新されました。前システムKOSMOS IIの提供を開始したのは1998年で,その後継システムとなる新図書館システムKOSMOS IIIの検討・移行作業・提供開始には2004年の秋以来6年を要しました。システム更新にかかわるこの6年間の主な出来事は以下のとおりです。
2004年
 KOSMOS IIIへの移行予定期日を2008年9月とすることとしました。(10月)
 KOSMOS IIのOPAC改善・検討ワーキング・グループ(のちOPAC改善委員会)により,OPAC改修と次期OPACへの提言をまとめました。(11月〜2006年10月)
2005年
 国内外の図書館システムについて調査しました。(5月〜11月)
 Ex Libris社とEndeavor社の各セミナーを開催しました。(5月)
 中期計画の立案に着手しました。(11月)
 海外主要図書館システム調査のため北米へ調査団を派遣しました。(11月〜12月)
2006年
 次世代サービス検討委員会の下部組織として次期システム選定ワーキング・グループを設置しました。(8月)
 要求仕様書(Request for Proposal)一次案を作成しました。(10月)
 KOSMOS III移行期日を1年間延期し2009年9月とすることとしました。『中期計画2006-2010』(『慶應義塾大学メディアセンター中期計画2006-2010』)を公にしました。(11月)
2007年
 リンクリゾルバ(SFX)と電子資源管理システム(Verde)を先行して導入しました。(4月)
 『中期計画2006-2010』の「行動計画」を公にしました。(6月)
 要求仕様書一次案を見直しました。(10月〜12月)
2008年
 要求仕様書完成版を図書館システム・ベンダーへ送付しました(国内7社,海外2社)。(1月)
 国内1社,海外2社より提案書を受領し(2月),その3社の公開プレゼンテーションを実施して(3月)絞り込み,海外2社のワークショップ形式のプレゼンテーションを実施しました。(5月)
 次期システム選定ワーキング・グループの推奨システムが決定したのち,次期システム政策委員会を設置しました。(6月)
 Ex Libris社のAlephとPrimoを採用することを機関決定し(11月),直ちに次期システム・プロジェクト室を設置しました。(12月)
2010年
 KOSMOS IIIの提供を開始しました。(4月)

2 中期計画の第一の主要目標として
 システムのライフサイクルの観点から,KOSMOS IIは,使用開始後10年が経過した時点(2008年)で更新することを2004年10月に決定しました。一方,学校法人の基本方針「慶應義塾21世紀グランドデザイン―感動教育実践・知的価値創造・実業世界開拓―」を大学の一部門であるメディアセンターにブレイクダウンし,『中期計画2006-2010』を立案する作業を,2005年11月から始めました。『中期計画2006-2010』は2006年11月に,その「行動計画」は2007年6月に公にされました。(注1
 中期計画の主要目標の一つとして最初に掲げられたのは「環境変化に対応した図書館サービスの実現」であり,その最初が「来館型と非来館型双方の図書館利用要求に応えることができる複合型のサービス基盤を,情報技術を活用して構築する」ことでした。ここでいうサービス基盤として,「行動計画」では,LibQUAL+®を使った大規模利用者調査に始まり(注2),遡及入力事業の継続,機関リポジトリの構築,電子リソースへのリモートアクセス環境の整備拡充等とともに,次期図書館システムKOSMOS IIIの導入が具体的な目標として挙げられていました。

3 システム更新の意味
 何故図書館システムを新しくしなければならないかという問いに対し,ライフサイクルの問題以外に,2004年当時は,印刷資源のために開発され環境変化についていけなくなったKOSMOS IIに代えて,利用者が印刷資源と電子資源の区別を意識してもしなくても検索することができて,区別に従った利用に導かれる統合型の利用者用検索システムと,利用者ひとりひとりに専用の図書館ホームページ機能My Libraryを備え,いつでもどこからでも使えるシステムを持つべきであると考えていました。
 数年間にわたる検討の期間を経て2008年になると,私たちは新しい図書館システム像を,以下のように明確に描くようになりました。
 ・多くの経費と時間を要する自力開発システムではなく,国際標準による最新情報技術への乗り換え経費が年間支払額に込みになっている完成度の高いパッケージ・システム
 ・世界市場において一定の支配力を持ち高い評価を得ている継続性あるシステム
 ・各種規格・標準の策定に直接参画しているシステム・ベンダーのシステム
 ・検索エンジン,情報サービス業,出版流通,教育産業等の図書館外の世界との連携を可能にする拡張性あるシステム
 それは次のように言うこともできます。
 ・利用者サービス志向の国際標準によるシステム
 ・利用者とのコミュニケーションを活性化するシステム
 ・拡張可能性が高い柔軟なシステム
 ・外部サービスとの連携機能に優れたシステム
 ・図書館から新しい価値を産み出せるシステム
 ・環境変化に耐える基盤をもったシステム
 このようなシステムでなければ更新の意味がないという共通理解に立って作業は進められました。

4 システム選定
 私たちの考えに合致したパッケージ・システムを図書館システム・ベンダーから提示してもらうためには,機能要件を明記した要求仕様書(Request for Proposal)が必要になります。それを作成するのに,途中の中断期間を含めて,2年以上を要しました。英文31頁にわたる要求仕様書は,通常の図書館業務(OPAC,閲覧,目録,典拠コントロール,収書,雑誌)とディスカバリー・トゥールに加え,管理レポートと統計,外部連携機能,また導入に必要なサービス(データ移行,ソフトウェアのインストールとテスト,トレーニングとドキュメント,ソフトウェア維持管理)とこれらの4年間の経費とを対象として,ベンダーからの提案を求めるものでした(除ハードウェア経費)。要求仕様書の機能要件の最初に掲げたのは,書誌データフォーマットがMARC21に準拠したシステムであること,および図書館界の諸国際規格に基づいて作られたシステムでなければならないということでした。
 この要求仕様書に対して国内1社,海外2社から提案書が提出され,国内6社からは提案を辞退する旨の回答がありました。要求仕様書を提示してから機関決定に至るまでに10ヶ月を要しました。
 選定のポイントと考えられたのは以下の5点です。
 1 インターネットとの親和性及び拡張可能性,グーグル図書データとの連携・展開の可能性
 2 サービス,サポートとメンテナンス体制
 3 目録システム,閲覧システム,OPAC
 4 収書・予算管理(含雑誌管理)システム
 5 価格
 以上のポイントのうち,最終選考に残った海外ベンダー2社間では3と4に大きな差は認められませんでした。比較のポイントはその他の観点に絞られ,1のインターネットとの親和性及び拡張可能性で一日の長が認められたこと,2のサポートとメンテナンス体制のあり方で新規導入の際のリスク低減を意識した提案であると評価したこと,5の価格面でも優位であったこと,この3点から,エクス・リブリス社(Ex Libris.本社はイスラエル)のパッケージ・システムであるAleph(統合図書館システム)とPrimo(ディスカバリー・トゥール)を採用することとしました。Alephは,世界の2,293の,主として大規模研究図書館で使用されている,世界シェア第一位のシステムです(2010年6月現在)。

5 次期システム・プロジェクト室
 機関決定を受け2008年12月に次期システム・プロジェクト室を設置し,その事務室を日吉メディアセンター内に置きました(同準備室は10月から)。プロジェクト室の設置期間は2010年7月までの20ヶ月としました(後に2010年9月まで延長されました)。
 プロジェクト室員の数は時期によって異同がありますが,兼務者を含め最大12名で,私たちにとってはかなり大所帯のプロジェクトとなりました。目録・収書・雑誌・閲覧の各モジュール担当者1名と電子資源管理/OPACに1名,日本語化に2名,システム担当に3名,そして室長と室長補佐です。これにEx Libris社から常駐の社員1名が加わりました。
 KOSMOS IIでは6キャンパスの6図書館の業務をKOSMOS I(1993〜1998)から引き継ぐあるいは新規にコンピュータ化するにあたって,学内での標準化あるいは統一を図ることができなかったという経緯があり,今回はその反省に立ち,プロジェクト室と全学的な業務別担当者の会議体との協力により,例えば閲覧規則のキャンパス間異同を統一することや,キャンパスにより異なる体系で管理されていた予算コードを標準化する等,可能な範囲での調整を事前に行いました。
 Ex Libris社のAlephとPrimoの採用は日本初でした。両システムが多言語対応であり,東アジア諸国での導入実績はあるとはいうものの,基本言語が英語で国内実績のないシステムを導入するには,利用者画面表示の日本語化から日本語の言語特性に対応した索引語生成と検索方式,そして日付・通貨単位の日本式表示等に至るまで,システム全体を,同パッケージとしては初めてとなる日本語と日本文化に対応させる必要が生じます。義塾は,日本最初の導入機関として契約書上,Ex Librisに協力して日本へのローカライズを行うことになり(product localization),プロジェクト室はその業務負担を織り込んで16ヶ月にわたる作業を進めました。
 新しい図書館システムKOSMOS IIIは,大きく3つの部分から構成されています。
 1 基幹図書館業務システム(Aleph)
 目録システム,閲覧システム,OPAC,収書・予算管理(含雑誌管理)システム
 2 リンクリゾルバと電子資源管理システム(SFXとVerde)
 3 ディスカバリー・トゥール(Primo)
 ウェブブラウザとのつながりをもった利用者用統合検索システム
 これらは基本的にパッケージですので,これに乗らない業務が,主として基幹図書館業務システムAlephとの関連で相当数あり,周辺システムとして新たに外付けで開発することもプロジェクト室の大きな任務となりました。以下のような機能が外付け開発の対象となりました。
 閲覧関連
 返却期限参照機能,入館ゲート用データ抽出,開講期・休業期切換え,休暇貸出設定,蔵書点検用データ抽出,利用者情報管理,利用者ID/PSW生成,資料状態コード管理,全学共通認証システム(keio.jp)連携他
 予算関連
 法人側の予算管理システムとの連携,帳票出力,統計,支払締め作業,リアルタイムの予算執行状況照会他
 受入目録関連
 図書商品マスター・ゲートウェイ,国内書店3社オンライン発注,分かち書き自動生成ゲートウェイ,雑誌契約更新支援システム,請求記号印刷機能,議会図書館件名標目(LCSH)付与支援他

6 OPACからKOSMOSへ
 新しい図書館システムの利用者向けの顔がどのようになるのか,つまり半ば化石化しインターネットに埋もれていた蔵書検索システムOPACに代わる利用者用統合検索システムが本当にインターネット上に図書館を浮かび上がらせ視認性の向上を図れるかという問題は,私たちにとって大きな関心事でした。移行の結果をみると,まだまだ今後に改善の余地を残しているといわざるをえません。
 Primoによって利用者用統合検索システムにはMy Library機能,タグ付け・書評reviewの投稿機能が付きました。使用言語や媒体の種類を問わず,蔵書だけでなく(リンクリゾルバSFXにより)電子ジャーナルのような契約利用の電子媒体資料も雑誌タイトルのレベルで,また表紙画像や目次も検索でき,各種情報源の横断検索ができるようにはなりました。また利用者は,貸出期限延長等従来窓口サービスだったものがオンラインでもサービス可能と知ると,提供開始後大きな広報活動がなかったにもかかわらず,オンラインサービスを選択するようになったことが初期の統計から歴然と見てとれました。
 しかし,電子ジャーナル契約情報や所蔵資料書誌レコードのグーグルやWorldCatへの種まき(feed)は始めたばかりですので,各種インターネットサービスから私たちの利用者用統合検索システムに利用者を誘導することはまだ不完全です。
 この意味で,視認性の向上では今後に課題を残していますが,国際標準のパッケージ・システムの利点として,順次ヴァージョン・アップを行うことにより解決されていく部分があり,また新しいソフトウェア(例えば,Primo Central等)の導入により,ドラスティックな改善が見込めるところもあります。
 PrimoとAleph中のOPACとの複合体である利用者用統合検索システムを私たちはKOSMOSと呼ぶことにしました。KOSMOSという略称に,業務用には世代を示すIIIを付けますが,利用者に対しては単にKOSMOSと呼ぶことにしました。1993年にこの英文略称を決めた際に,「KOSMOSは情報宇宙(コスモス)へのゲートウェイです」と考えていましたが,その思いは今も変わりません。

7 組織見直し
 私たちは,1998年にKOSMOS IIへ移行した際に組織見直しを行い,6キャンパスで行われた選書作業以降の整理業務をメディアセンター本部で一括して行うという体制に変えました。これにより,整理等の間接サービス部門の職員の若干数を閲覧・レファレンス等の直接サービス部門に振り向け,利用者サービスの充実を図りました。
 KOSMOS IIIへの移行に際しても組織見直しを行いましたが,それは,12年前の見直しのあとを受けて,主に本部を対象としたものとなりました。見直しは2つの観点からなされ,1つは,中長期的にみて伝統的媒体と電子媒体の担当を画然と区別し双方に対等の重みを持たせた組織とすべきであるという考えに基づき,電子情報環境担当を新設しました。いま1つは,システム更新に伴い図書と雑誌の担当を業務フロー上分離する必然性がなくなりましたので,受入目録担当へ一本化しました。
 この組織変更に対応してメディアセンター内規を改正し(2010年7月1日施行),本部は図1のような3担当となりました。
 組織変更にまで至らない,6キャンパスと本部の業務分担の変更も行い,各キャンパスでは選書に加え発注と予算執行管理までを担当し,本部では受入・支払・目録を担当するという形に変えました。
 利用者の声を聞きながらシステムの評価と改善を行うこと,プロジェクト室解散後の組織のあり方については引き続き検討が必要であると考えています。


1)http://www.lib.keio.ac.jp/jp/headquarter
/midrange_plan.html
,(参照2010-08-18).
2) 2007〜2009 年度にかけ利用者調査ワーキンググループが行った調査の概要と実施結果,メンバーによる執筆論文・口頭発表一覧等は以下で見ることができる.
http://project.lib.keio.ac.jp/assess-wg/,(参照2010-08-18).

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