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ナンバー17、2010年 目次へリンク 2010年11月30日発行
特集 KOSMOS III―新図書館システムの導入―:第3部
10年後のKOSMOSを夢見て
長野 裕恵(ながの ひろえ)
三田メディアセンター
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1 「検索」を取り巻く環境の変化
 旧OPACの公開は約10年前。目録のオンライン化が進み,それを各館がWeb上に公開するというフェーズに入った頃のことだ。同時にこの10年で,図書館を取り巻く環境は大きく変化した。インターネットが生活インフラとなり,論文全文がインターネット上に有料・無料で公開されるようになった。大学図書館では,多くのジャーナルが電子媒体となり,図書も電子ブックが急増する。いまや,人文・社会科学を主題とする三田メディアセンターにおいても,新規に購入する雑誌の半分以上が電子媒体となっている。そして,この10年間に登場し,図書館にとっても,社会にとっても大きな影響を与えたのがGoogleやAmazonだ。膨大な検索結果をキーワードに適合する順に表示させ,スペルミスまで指摘してくれるGoogleや,利用者によるレビュー,販売履歴によるレコメンド機能,データの二次利用などを提供するAmazonは,利用者の「情報検索」に対する認識を大きく変えた。

2 数年後のKOSMOSに期待する機能
 図書館とGoogleやAmazonの目的は異なる。図書館がGoogleやAmazonを追いかける必要は無い。しかし,図書館の蔵書検索システムは,図書館が保存し,提供する資料を「検索」するシステムである。情報検索の側面において,GoogleやAmazonが優れている以上,それらの検索体験に改良のヒントを得ることは間違ってはいないだろう。それを踏まえた上で,今後のKOSMOSに期待する機能をいくつかあげてみる。
 第1に,現在のKOSMOSで提供されている適合度順表示の精度を向上させたい。この機能はまだ開発途上でもあり,不満も多い。その主な原因は,情報量に乏しい書誌データを適合性の判断に使っていることが考えられる。既存の書誌情報に加え,目次や全文に及ぶ詳細な内容情報,利用者が自由に付与できるタグ情報やレビューなども利用する必要があるだろう。また,今後検索ログが蓄積されることで,それを判断材料として利用できる可能性にも期待したい。
 第2に,資料と資料の関連性を示す情報を提供したい。従来の件名や分類などの情報に加え,タグ情報や,年間60万件を超える貸出情報を活用することで,Amazonのように「この資料を読んでいる人は,この資料も読んでいます」という提案ができると便利だ。書誌データのみの検索ではヒットしなかった資料が見つかることもあるかもしれない。
 第3に,収録範囲も拡大していきたい。KOSMOSでは従来のOPAC同様,雑誌論文の検索ができない。しかし,利用者があるテーマに沿った情報を得ようとする場合に,図書館員が定義するところの雑誌や図書といった区分けは全く意味がない。例えばGoogleでは,言葉の定義から論文のPDFまで,ひとつのキーワードで検索することができる。KOSMOSでも,契約するデータベースやCiNiiを同時検索し,論文を含めた検索ができるようになると便利だろう。
 最後に,利用者が全文を得るまでのステップを短縮したい。検索結果から全文にアクセスできるGoogleとは異なり,蔵書検索システムは,図書・雑誌の所在を知ることを目的としていたために,全文へのアクセスを提供する機能に欠けている。2010年8月より,KOSMOSから直接リモートアクセスするサービスを提供しはじめたが,その提供範囲はまだ限定的だ。各キャンパスのみの電子ジャーナルや,データベース,さらにはGoogle Library Project等を通じて作成されている慶應独自の電子媒体についても,KOSMOSから直接アクセスできると便利だろう。検索結果から全文が簡単に参照できることで,要・不要の判断も容易になるに違いない。

3 10年後のKOSMOS
 最初に述べたように,旧システムが導入されてから約10年,図書館の蔵書検索はほとんどがWeb上で行われるようになった。では,これからの10年はどうなるのだろうか。
 これから10年のうちに,学術情報を含む情報流通は,「電子版もある」から「紙版もある」という時代へ変化するだろう。GoogleやOpen Content Alliance(OCA),各国国立図書館・各機関による既存資料の電子化に加え,ボーンデジタルで公開される資料の増加により,コンテンツの流れる媒体そのものが,紙から電子へ置き換わると考えられる。
 10年後,紙媒体が無くなっているとは思わないが,特に学術情報については電子資源が主体となっている可能性がある。特に自然科学系分野については,紙媒体はアーカイブとして残されたものは別として,利用に供するものがなくなっていても不思議ではない。現に医学系や理工学系図書館の新着雑誌書架はどんどん削られており,海外の例では,紙媒体のほとんどない(Bookless)図書館も登場している(参考文献1)。人文社会科学系図書館においても,今後出版される資料や,すでに著作権が切れている古い資料については,デジタル媒体の利用が進んでいるだろう。
 もし電子媒体が主流となるならば,図書形態の主題別論文集が無くなり,学術雑誌も月刊などではなく,査読を経た論文が次々と公開される形になる可能性もある。紙媒体にしないのであれば,あえてそれを月,週などの小単位にまとめる必要が無いからだ。つまり,学術情報の世界では,流通するために便宜的に取り入れられていた物理的なパッケージが無くなり,コンテンツが中心となる時代が到来すると考えられる。
 刊行物という実体が無くなり,Web上にコンテンツが分散している状況になれば,それを利用者が効率的に探すのは,たとえGoogleがあったとしても困難になるかもしれない。同時に図書館にとっても,分散化した情報の収集は従来よりも難しくなる。例えば,CiNiiを始めとする有料・無料の論文データベースが索引した情報を,APIやリンクリゾルバを通じて収集するなど,他機関との連携や,工夫が必要となるだろう。
 一方で,紙という物理的制約を逃れた図書館は,オンライン上でいかようにも蔵書を構築できるということでもある。つまり,次の10年は図書館そのものがWeb上に展開される時期なのかもしれない。今までも「電子図書館」という概念は存在し, 20年ほど前から実際に議論されていたが, それが本当の意味で実現できる環境がようやくできあがってきた。
 したがって,これからKOSMOSは,Web上の図書館として機能することを要求されるようになると考える。つまり,資料はKOSMOSに保存(収集)され,それに書誌データや,タグ,レビューなどが付与され(整理),検索に提供される。利用者は検索結果から,そのまま全文へアクセス(利用)する。このプロセスは,従来の図書館が,資料を収集・整理・保存し,利用に供していたのと全く変わらない。変わるのは,紙の資料を購入してラベルを貼るとか,図書館に足を運ぶといった物理的・空間的制約が,限りなくゼロになるということだけだ。ただし,既存の資料整理の手法は,基本的にパッケージを前提として構築されている。コンテンツ主体となった世界において,そのやり方がいつまで通用するかはわからない。また,検索手法においても,図書と雑誌を分け,さらに論文は論文索引で検索し,という今までの資料検索の流れは,慣れてしまえばわかりやすくはあるが,それを踏襲するだけでは,これからの利用者はGoogleに流れていってしまう。図書館の強みは,ある程度価値判断がなされた(選書された)情報が,その図書館の目的に応じて収集・整理され,それに検索を助ける情報が付与されていることにある。利用者により速く,確実に一次資料を提供するという目的を達成するために,既存の概念に囚われることなく変化に対応することが,これからのKOSMOSの課題と言える。

参考文献
1)国立国会図書館.スタンフォード大学,本のほとんど無い図書館を計画.カレントアウェアネス-E. no.172, E1055. http://current.ndl.go.jp/e1055,(参照2010-08-15)

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